先日、京都大学の佐伯啓思先生に福岡にて講演いただいた際の本が出来あがった。佐伯先生は、金融資本主義に対して否定的であり、貨幣とは、交換手段では無く、信用であると言う部分から論じてくださる。構造改革が、社会にとって重要な社会資本を崩壊させたことへの批判もその通りだと思う。ただ、今後も1%程度の低成長は可能とのご意見だった。これについては、私は納得出来ずにいる。名目成長(+インフレ)であれば可能にしても、結局のところ貨幣(信用)をすり減らすことになってします。GDPを生みだすには、エネルギーが必要であり、そのエネルギーが低減していくのに、どうやって実質GDPを増加させうるのか、全く想像出来ない。


まだ、下記に出て来る本を読んでいないが、水野和夫さんも一度お会いしたいと思っている。来年は忙しいのだが、必要なことと思われるので、なんとかしよう。


http://bit.ly/fBMhjw

エコノミストの水野和夫さんと気鋭の哲学者、萱野稔人・津田塾大准教授の対談を収めた「超マクロ展望・世界経済の真実」(集英社新書)を面白く読んだ。  いまの大不況は単なる景気循環の問題ではない。資本主義の大潮流の変化そのものである。そういう「超マクロ」の主張である。  両氏が着目するのは、新興国の台頭で先進国が資源(とりわけ石油)を買いたたけなくなり、「交易条件の悪化」が起きた点。さらに経済ナショナリズムが高揚し、先進国優位の構造は崩れ去った。  平たく言えば、先進国は従来のやり方ではもうからなくなった。景気が上向いても賃金の下落が止まらない。それが何よりの証拠。米国も日本も悩みは深い。  米国は「金融帝国」と化して経済覇権の延命を図った。その試みは一時的に成功したが、リーマン・ショックでその限界を露呈した。資源価格の高騰による交易条件の悪化は今後も続くから、先進国経済は低成長を免れない。  とても大胆な仮説に満ちていて刺激的だ。  ふたりの議論はカナダの投資銀行のエコノミスト、ジェフ・ルービンの書いた「なぜ世界は縮みつつあるのか--石油とグローバリゼーションの終わり」に似ている。  ルービンも今度の不況の根本原因は石油価格の上昇だという。疑う者は戦後の不況を検証せよ。いずれの不況にも「石油の指紋」がくっきりと遺留しており、今回もその例外ではない。米国の不動産バブル崩壊の理由は金利の上昇だが、それを起こした犯人は石油価格の上昇である。  中国の影響が大きいが、産油国の自家消費が急増し輸出余力が減退している。灼熱(しゃくねつ)の砂漠に建ったドバイの人工スキー場。1日動かすのに平均的米国人ドライバーの1カ月分のガソリンが必要だ。  カナダのオイルサンドなど非在来型の石油は確かに大量にある。しかしそれは「高い石油」。「安い石油」はピークを越しており、もうグローバリゼーションは維持できない。結論は「世界は縮んでいくほかない」である。  しかし、悪いことばかりではない。原油が1バレル=100ドルを超すような高値の時期、中国から米国への鉄鋼や生鮮食品の輸入が急減した。それに代わって国内鉄鋼業は増産に追われ、耕作放棄地で再び作付けが始まった。そうは言っていないが、米国は中国なしでやっていける。  石油は枯渇しないが高騰する。グローバリゼーションは一夜の夢だった。世界の新しい現実を学ぶのに役立つ2冊である。(専門編集委員) 毎日新聞 2010年12月15日 東京朝刊